SESエンジニアとして2〜3年目に入り、テストや運用保守ばかりで伸びているかどうかわからなくなっています。環境のせいなのか、自分の動き方のせいなのか、どちらで詰まっているのかが見えないと、転職に踏み切るべきか今の現場で踏ん張るべきかが決められません。
スキルが伸びるかどうかは、「SESだから」では決まりません。会社の事情と自分の動き方の2面から決まることで、どちらが詰まっているかで打ち手が変わります。
転職エージェントに相談する前に、自分のケースがどちらなのかを確認しておいてください。
なぜSESでスキルが伸びないと感じるのか
1年目は先輩に付きっきりでないと仕事にならなかったのに、2〜3年目には割と自走できるようになります。多くのSESエンジニアがこの段階までは順調に上ります。
引っかかるのはその先です。テストや運用保守の実務に慣れた後、そこから先の成長が止まるケースが出てきます。この天井の感覚が、SESではスキルが伸びないという言葉になって出てきます。なぜこうなるのか、理由は一つに絞れません。
下流工程に固定される多重下請けの構造
IT業界の仕事は元請け→一次請け→二次請け→三次請けという多重下請けの構造で流れていきます。SES企業はこのうち二次・三次に位置することが多く、上から降りてきた仕事の一部を引き受けます。
そのため現場に出る単位が、テスト要員・コーディング要員といった切り分けになります。設計や要件定義は上の階層が握っていて、降りてくるのはテストやコーディングのような切り出された一部の作業です。
こうして下流工程に固定される形になると、二次・三次の低単価案件中心の会社では、本人がどれだけ意欲を持っていても現場が持っている仕事の範囲を超えられません。所属する階層が、触れる工程の上限をそのまま決めてしまいます。
研修にお金を回せない二次・三次請けの事情
伸びない理由は本人の外側にもあります。二次・三次請けでは、受注単価が削られていく仕組みが根底にある事情です。
利益を残すには、社員を育てる時間より経験者をそのまま現場へ送り込むほうが優先されます。研修へお金を回す余裕が、そもそも会社の側にないことも多く、低い単価で案件を受けている会社は売上も低く、社員の給料も上がりにくいまま回り続けます。
加えて、効いてくるのはお金の話だけではありません。現場が自社から物理的に離れていると、自社でやる勉強会や研修に顔を出しづらくなります。会社が学びの場を用意しても、そこへ戻る時間が取れないまま終わるケースも多いです。
慣れた現場で難しい案件を避けてしまう自己固定化
成長の上限を決めているのは会社の事情だけではありません。
たとえば、1年目は先輩に付きっきりだった人も、数年で割と自走できるようになります。この段階に来ると、今の現場は居心地がよくなります。手順は頭に入っていて、無理に背伸びしなくても一日が回ります。難しい案件に手を挙げれば失敗のリスクを負いますが、慣れた作業を続けている限りその不安はありません。
けれど、楽な現場から抜け出せないでいる本人も、自分が成長していないことには薄々気づいています。今日できた仕事は半年前にもできた仕事で、新しく覚えたことが思い出せないままです。居心地のよさと伸びていない焦りが、同じ場所に同居したまま続きます。
常駐期間が短いと経験が定着しないまま終わる
常駐が短期で切り替わる案件が多い会社では、覚えかけた経験が定着する前に次の現場へ移ることになります。
会社の案件構成がそうなっている以上、どんな現場に入っても同じ繰り返しになります。
それは業態のせいか、現場のせいか、自分のせいか
伸びない理由を全部まとめて「SESだから」で片づけてしまうと、打ち手をまちがえます。会社側の事情なのか、自分の動き方のせいなのかを切り分けるには、それぞれ見るべきポイントが違います。あなたのケースがどちらに当てはまるのか、ここで確認します。
「SESだから伸びない」と「この現場だから伸びない」は別物
SESという働き方そのものが原因とは限りません。
同じSESでも、研修が用意されていて、いずれ設計や開発のような難しい仕事に関われる会社があります。安く請けた仕事しか持っていなくて、社員にはテストや運用保守ばかり回す会社もあります。どちらもSESです。でも社員が任せてもらえる仕事のレベルは、まるでちがってきます。
もっとも、伸びていないのは、あなたの力不足とは限りません。本当はもっと難しい仕事もできるのに、会社がそういう案件を持っていなければ、難しい仕事はそもそも回ってきません。だから「SESだから伸びない」と思う前に、「この会社が持っている案件だから伸びない」のではないかと、いったん疑ってみてください。
企業側に原因がある状態の見分け方
企業側に原因があるかどうかは、サインで見分けられます。
たとえば、任される仕事が、何か月たってもテストか運用保守のままです。設計や開発に手を伸ばすチャンスもやってきません。研修やスキルアップの制度が、名前はあっても中身はありません。常駐先が遠くて、わからないことを自社のエンジニアに聞ける場所もありません。
こうしたサインがいくつも重なっているなら、あなたがどれだけがんばっても現場の天井は動きません。会社が持っている案件のレベルが低いと、せっかくの努力を向ける先がそこにないからです。これは、あなた一人ががんばっても変えられない問題です。
自分の動き方に原因がある状態の見分け方
では逆に、自分の側に原因がある場合、どんな兆候が出るでしょうか。
たとえば、伸びる現場にいるのに止まっている人には、似た動き方があります。もっと難しい仕事をやってみたいと、まだ一度も会社や現場に言えていません。手を挙げれば回ってきたかもしれない仕事を、慣れた作業のほうが楽だからと自分から避けてしまっています。
動き方は質問のしかたにも出ます。調べればわかることを、全員のいるチャットでそのまま聞いてしまいがちです。参画して日が浅いうちから、コマンドの使い方や設定ファイルの置き場所まで人に尋ねてしまう人もいます。
こういう動き方をしていると、チームの中で「自己解決を試みない人」という印象がつく場合があります。ただ、これは自分しだいで変えられる話で、会社の都合とちがって今日から手をつけられます。
スキルが伸びる現場と伸びない現場の見分け方
いい現場かどうかは入ってみないと分からない、と思いがちです。けれど伸びる現場と止まる現場の違いは、配属前の面談や求人票の段階でいくつか確認できます。入った後で気づくのと、入る前に絞り込んでおくのとでは、積み上がるものがまるで違ってきます。
上流工程に関与できる余地があるか
上流工程に関与できる余地があるかどうかは、配属前の面談で確認できます。テスト・運用保守だけで完結するような案件だと、何年常駐しても設計の考え方が身につきません。担当する範囲がコードの動作確認や障害対応に限られ、なぜその仕様になったのかを知る場面がないからです。
一方、設計レビューへの同席や要件ヒアリングの補助がある案件では、自分でコードを書かなくても上流の思考に触れる機会があります。仕様が決まっていく過程をそばで見るかどうかで、数年後に残るものに差が出ます。
質問できる先輩エンジニアが現場にいるか
詰まったとき、誰に聞けるか。わからないことがあっても自社のエンジニアに質問できず、解決できないまま仕事についていけない現場があります。常駐先のメンバーは別会社の人間で、込み入った相談はしづらいです。自社の同僚は離れた現場にいて、チャットを送っても反応は遅れがちです。
逆に、苦手分野を得意とするエンジニアに質問でき、仕事を通じた人脈からスキルが広がる現場もあります。同じ常駐でも、隣に聞ける人がいるかどうかで一日の学びの量がまるで違ってきます。
一人作業かチームで開発しているか
一人で切り出された作業を黙々とこなす案件と、複数人でひとつの開発を回す案件では、見える範囲が違ってきます。一人作業だと自分の担当範囲しか触らず、他の人の書き方やレビューの基準に触れません。
チームで開発していれば、プルリクエストのやり取りや設計の議論が日常的に流れてきます。配属が「テスト要員」「コーディング要員」という単位で切られているなら、一人作業に近い働き方になりやすいです。
任される業務の範囲が広がるか
入った当初と今で、任される仕事は変わったでしょうか。半年経っても一年経っても同じ作業を割り振られ続ける案件では、できる幅は広がりません。
たとえば、テスト消化だけを担当していた人が、テスト設計や不具合の切り分けまで任されるようになると、見える範囲が一段広がります。業務の範囲が固定されたままなら、その現場は本人の成長を想定していません。
常駐期間が3か月以上あるか
常駐が1か月程度で切り替わる短期案件があります。環境の立ち上げ方法やチーム独自のルールを飲み込むだけで最初の数週間は過ぎていきます。ようやく流れがわかってきた頃に契約が切れれば、手元には断片だけが残ります。
目安として、ひとつの現場に3か月以上いられるかは配属前に確認できる軸です。同じ常駐でも、腰を据えられる期間があるかどうかで定着するものが変わってきます。
転職を決める前に今の現場でやること
スキルが伸びないと感じると、反射的に転職サイトを開きたくなります。ただ、その前に現場でできる手が残っています。まず任された作業を期日通りに仕上げて信頼を作り、そこから気づいたことを声に出して任される範囲を広げていきます。それでも変わらないと分かってから、転職を判断しても遅くありません。
まず現場で信頼を積んで任される範囲を広げる
最初にやるのは、振られたテストや手順書通りの作業を期日内に終えることです。その上で、テストケースの抜けに気づいたら自分から指摘する、手順の改善点を一言添える、といった声を出していきます。任された業務の外に少しずつ手を伸ばすと、現場のリーダーが次に何を任せるかを判断する手がかりが増えていきます。
そうして担当タスクが増えると、テストの外側にある作業に声がかかり始めます。設計書の確認を頼まれたり、要件の聞き取りに同席して議事をまとめたり、といった工程です。下流に固定されているように見えても、信頼の積み上げ方しだいで任される範囲が広がる現場はあります。逆に、いくら動いても作業の幅が変わらなければ、現場が低レベルの案件しか持っていないという合図です。
営業担当に言語・工程・期間まで伝える
現場と並行して、営業にも話を通しておきます。
実際に、普段からSES営業と関係を保っておくと、案件の希望が通りやすくなります。営業は複数の現場を抱え、次にどのエンジニアをどこへ出すかを日々調整しています。顔を合わせる機会が少なければ、希望を伝えるタイミング自体が生まれません。月一の面談やチャットで接点を残しておくだけで、自分の名前が候補に挙がる確率は上がります。
そのうえで、やりたい言語・関わりたい工程・希望する常駐期間まで踏み込んで話します。「上流に行きたい」では営業も動けません。Javaの開発に入りたい、設計から関わりたい、半年は腰を据えたい、というところまで伝えます。
ここまで粒度を落とすと、合致する案件が出たときに思い出してもらえます。今の現場が合わないなら、まず営業に相談します。それで解決しなければ、案件チェンジを依頼する流れです。
資格や副業でスキルを客観的に示す
現場の作業だけでは、自分の実力を社外に見せる材料が手元に残りません。基本情報技術者や応用情報技術者なら、スキルシートに一行書ける客観的な証明になります。GitHubに公開したコードや、副業で納品した成果物も同様で、テストや運用保守の経験だけでは説明しづらい技術力を第三者が確認できる形に変えておけます。
IPAによると、基本情報技術者試験の令和6年度の合格率は40.8%、年間の受験者は約13万人です。受ければ通る試験ではなく、現場で手を動かしながら半年ほど準備してようやく届く水準です。
それでも案件が変わらないなら転職を判断する
現場で動き、営業に交渉しても案件が変わらないなら、転職を考える段階です。
ここまで試して変わらなかったという事実は、会社ではなく自分の動き方を変えた上での結論です。
ただ、判断軸を持たないまま辞めると、次もスキルのつかないSESに入って同じことを繰り返します。どの現場に入るか、現場でどう動くかという視点を持って次を選ばないと、社名が変わるだけで状況は変わりません。なぜSESで伸びないと言われるのか、辞める前に読んでおきたい論点があります。
▶ SESはやめとけは本当か?1〜3年目が抜けどきを見極める基準
スキルが止まったまま年数を重ねるとどうなるか
現場で動いても変わらず、会社を変える判断に至ったとしても、スキルが積み上がっていない状態で動くと選択肢が狭まります。スキルが止まったまま年数だけ増えると、若さというアドバンテージがなくなった時点で案件が決まりにくくなります。客先常駐では、スキルが同水準なら若さと単価の低さで判断されるケースが目立ちます。年齢が上がるほど開発案件に入りにくくなります。
2年目から4年目で案件の選択肢が狭まる
入社直後は経験の浅さが前提なので、テストや運用保守でも案件は決まります。2年目から4年目が分岐点です。同じ年次の人がコードを書き始める頃、単純作業しかできないままだと回ってくる案件が減ります。営業が提案できる先が限られ、アサインそのものが決まりにくくなります。
高度なスキルを使う開発は、なかなか任されません。回ってくるのは運用・保守寄りの案件で、そこでまた似た作業を繰り返します。経験年数は増えるのに、書ける職務経歴書は薄いままです。
30代で開発案件に入りにくくなる
開発の現場には、年齢の線引きが残っています。
厚労省のjobtagでは、システムエンジニア(Webサービス開発)の全国平均年収は578.5万円、平均年齢は37.1歳です。30代後半まで開発で食べている人は確かにいます。ただし、その多くは20代のうちに開発経験を積んだ人で、早い段階で上流の案件を踏んでいます。30代に入ってから運用保守や保守寄りの経歴で開発案件へ移ろうとすると、書類の段階で通りにくくなります。
実際に客先常駐では、年齢が上がるほど未経験の開発には入れません。単価の安い若手のほうが選ばれるからです。
保守・テスト中心の経歴から開発へ移るための手順は、別記事でまとめています。
▶ SESから脱出するには?保守中心の2〜4年目が開発へ移る方法を解説!
単純作業はAIに置き換わっていく
テスト項目の消化やログ確認、定型の保守作業は、自動化ツールが先に手をつけやすい領域です。経産省が2019年に公表した試算では、2030年にはIT人材が最大で約79万人不足するとされていますが、足りないのは設計や開発を動かせる人で、定型作業の担い手ではありません。
設計・開発人材の需要は大きく、定型作業の担い手の出番は細る方向にあります。同じ作業を5年続けても、その担当領域ごと縮小すれば経歴に残るものはありません。
よくある質問
SESで3年働けばスキルは身につく?
一定のスキルは身につきますが、どの工程を担当してきたかで「身につく範囲」に大きな差があります。
テストや運用保守に限定された現場で数年を過ごした場合と、設計の話に触れる場面があった現場とでは、手元に残る経験の種類が分かれます。
基本を質問しただけでスキル不足と判断される?
参画して日が浅いうちは、基本的な動作を確認すること自体は問題になりません。
ただ、調べれば分かることを全員のいるチャットで何度も尋ねる、または短期間に同じ内容の質問を繰り返すと、「自己解決を試みない人」という印象を持たれる場合があります。質問の前にドキュメントや社内Wikiを一度検索する習慣があるだけで、受け取られ方はかなり変わります。
上流に行きたいと営業に伝えても案件が変わらないときは?
「上流に行きたい」という言葉だけでは、営業が合致する案件を探す手がかりが少なすぎます。
使いたい言語、関わりたい工程、希望する常駐の長さを絞って伝えると、営業が案件を当てやすくなります。そこまで伝えても数か月変化がない場合は、会社がその水準の案件を持っていないことの根拠になります。
スキル不足のまま転職できるのは何歳まで?
年齢で一律に線を引くのは難しく、経歴の中身と年齢の組み合わせで判断されます。
下流工程の経歴のまま年数が増えるほど、開発未経験での転職は書類の段階で通りにくくなります。「何歳まで大丈夫」という目安よりも、今の経歴で何が書けて何が書けないかを確認し、足りない部分を早めに補う動き方のほうが実際には有効です。
運用保守ばかりの現場は今すぐ辞めるべき?
「今すぐ辞めるべきか」は、会社のせいか自分の動き方のせいかを切り分けてから判断できます。
たとえば、現場でやりたい仕事を申し出たか、営業に希望する工程や言語を伝えたか、それでも何も変わらなかったか。この順番で確認してから辞めないと、次の会社でも似た状況を繰り返すことがあります。
まとめ
SESでスキルが伸びるかどうかは、「SESだから」という働き方では決まりません。会社が持っている案件のレベルと研修への姿勢、そして自分が現場でどう動くか。この二つが重なって、伸びる人と止まる人の差が生まれます。下流に固定されているのが会社の事情なのか、慣れた作業に逃げてしまっている自分の動き方なのかを切り分けると、次に打つ手が見えてきます。
まずは今の現場を、上流に関われるか、聞ける相手がいるか、任される範囲が広がるか、腰を据えられる期間があるか、という軸で点検してみてください。そのうえで、現場で信頼を積み、営業にやりたい言語や工程や期間を絞って伝え、資格や副業でスキルを形に残していきます。ここまで動いても案件が変わらないのなら、それは会社を変える判断材料になります。
辞めること自体が目的ではありません。どの現場で、どう動くかという視点を持って次を選べば、社名が変わるだけで状況は同じ、という事態を避けられます。