SES企業にとって、エンド開拓は利益率向上や安定した案件獲得、ブランド力強化など、様々なメリットがあります。しかし、エンド開拓を成功させるためには、ターゲット企業の選定や営業手法、契約形態など、多くの課題があることも事実です。本記事では、SES企業がエンド開拓で成果を上げるための具体的な方法やポイントを詳しく解説します。

SES企業がエンド開拓を行う理由

SES企業にとって、エンド開拓は非常に重要な営業活動です。エンド開拓とは、エンドユーザー企業に直接営業を行い、システム開発案件を受注することを指します。従来、SES企業は元請けのSIer(システムインテグレーター)から案件を受注することが多かったのですが、近年ではエンド開拓の重要性が高まっています。

以下では、SES企業がエンド開拓に力を入れる主な理由について、詳しく解説していきます。

利益率向上の可能性

SES企業がエンド開拓を行う最大の理由は、利益率の向上です。元請けSIerを介さずにエンド企業と直接取引することで、中間マージンを削減できます。つまり、同じ案件を受注しても、エンド開拓の方が利益率が高くなるのです。

例えば、元請けSIerから受注した場合、売上の30%程度が中間マージンとして差し引かれることがあります。一方、エンド開拓で直接受注した場合、その分のマージンを自社の利益として確保できます。利益率が10%から15%程度向上するケースも珍しくありません。

利益率が上がれば、売上高が同じでも利益額は増加します。つまり、エンド開拓は収益性の改善に直結するのです。利益率の高い案件を多く獲得できれば、SES企業の経営基盤は強化されていきます。

安定した案件獲得へ

エンド開拓のもう一つの大きなメリットは、安定した案件の獲得です。元請けSIerからの案件は、短期的なものが多い傾向にあります。それに対して、エンド企業との直接取引では、長期的な契約を結ぶことができます。

エンド企業は、自社のシステムを長期的に維持・運用していく必要があります。そのため、信頼できるSES企業とは長期的な取引関係を築きたいと考えています。エンド開拓で直接受注することで、安定した案件を継続的に獲得できるようになるのです。

長期契約は、SES企業にとって大きなメリットです。事業の安定性が高まり、将来を見据えた経営戦略を立てやすくなります。また、長期的な取引関係を通じて、エンド企業のニーズを深く理解することができます。それにより、より付加価値の高いサービスを提供できるようになるでしょう。

ブランド力強化の機会

エンド開拓は、SES企業のブランド力を高めるチャンスでもあります。大手企業など、知名度の高いエンド企業との直接取引実績は、対外的な信用度アップにつながります。

SES企業の実力は、どのようなエンド企業と取引しているかで判断されることがあります。大手企業との取引実績は、SES企業の技術力の高さを証明するものだと受け止められるのです。エンド開拓で実績を積み重ねることで、業界内での認知度や評価が上がっていきます。

ブランド力が高まれば、優秀なエンジニアの採用にも好影響が期待できます。優秀な人材は、ブランド力のある企業を志向する傾向があるからです。エンド開拓は、人材獲得力の向上にもつながる可能性があるのです。

技術力向上のチャンス

エンド開拓は、SES企業のエンジニアの技術力向上にもつながります。エンド企業の案件は、最新技術を用いた大規模プロジェクトであることが少なくありません。そうした案件に参画することで、エンジニアのスキルアップが期待できます。

例えば、クラウドやAI、ビッグデータなど、最先端の技術領域の案件を受注できれば、エンジニアはその技術を習得するチャンスを得られます。プロジェクトを通じて実践的なスキルを身につけることができるのです。

エンジニアの技術力向上は、SES企業の競争力強化に直結します。高度な技術を持つエンジニアが多いほど、付加価値の高いサービスを提供できるようになります。エンド開拓は、エンジニアのスキルアップを通じて、SES企業の成長を促す効果があるのです。

商流短縮で効率化

エンド開拓のメリットは、業務効率の改善にもつながります。元請けSIerを介さない分、商流がシンプルになるからです。

元請けSIerを介する場合、SES企業からエンド企業までの意思決定プロセスが複雑になりがちです。仕様変更や追加開発など、様々な調整事項が発生した際に、意思決定に時間がかかってしまうのです。

一方、エンド開拓で直接受注すれば、エンド企業との間で迅速な意思決定が可能になります。商流がシンプルになることで、無駄なやり取りが減り、開発スピードが上がるのです。また、トラブル発生時の対応もスムーズになります。

業務効率化は、限られた経営資源を有効活用する上で重要です。無駄な工数を削減できれば、より価値の高い業務に注力できるようになります。エンド開拓は、業務改善を通じて、SES企業の生産性向上に寄与するのです。

以上のように、SES企業がエンド開拓に力を入れる理由は明確です。利益率の向上、安定した案件の獲得、ブランド力の強化、技術力の向上、業務効率化など、企業の成長に欠かせない様々なメリットがあるからです。

エンド開拓のターゲット企業とは?

SES企業がエンド開拓を行う際、どのような企業をターゲットにすべきでしょうか。ここでは、有望な開拓先について解説します。上場企業やWebサービス企業など、将来性のある企業に注目が集まっています。

大手企業

大手企業、特に上場企業は、エンド開拓の有力ターゲットです。自社でITチームを抱えているものの、大規模開発時にはリソース不足に陥りがちです。一時的な需要に対応するため、SES企業に発注するケースが多いのです。

大手企業との取引は、高い利益率が期待できます。また、ブランド力向上にもつながるでしょう。大手企業の案件実績は、営業面での強力な武器になります。

成長中のベンチャー企業

急成長中のベンチャー企業、特にWebサービス系のスタートアップも有望です。事業拡大に伴い、エンジニア需要が高まっているからです。

スタートアップは、迅速な開発体制の構築を求めています。自社採用よりもSES企業への発注の方が、スピーディに対応できるのです。新サービスの立ち上げ支援実績があれば、営業面で大きなアピールポイントになるでしょう。

製造業

製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しており、ITエンジニアの需要が高まっています。特に、大手製造業は有望な開拓先と言えます。

製造業のシステム開発は、業務知識の理解が不可欠です。製造業向けの開発実績があれば、他社に対する優位性を発揮できるでしょう。長期的かつ安定的な取引につながる可能性が高いのも魅力です。

金融機関

金融機関のIT投資も活発化しています。フィンテック(FinTech)と呼ばれる金融とITの融合が進んでおり、エンジニア需要は旺盛です。

銀行や証券会社、保険会社などの大手金融機関は、システム開発規模が大きいのが特徴です。金融関連の開発実績は、他の金融機関への営業にも有効活用できるでしょう。セキュリティ面の信頼性の高さもアピールポイントになります。

以上のように、SES企業がエンド開拓を行う際は、大手企業やベンチャー企業、製造業、金融機関などが有望なターゲットになります。各業界の動向を踏まえつつ、自社の強みが活かせる分野を中心に営業活動を展開することが重要です。

SES企業がエンド開拓を行う方法

SES企業がエンド開拓を成功させるためには、効果的な営業手法を選択することが重要です。ターゲット企業のニーズや特性を踏まえた上で、最適なアプローチ方法を検討する必要があります。ここでは、SES企業がエンド開拓を行う際に活用できる代表的な営業手法について解説します。

営業手法の選択は、SES企業の営業戦略の根幹を成すものです。自社の強みや営業リソースを考慮しつつ、ターゲット企業との接点を効率的に作っていくことが求められます。単一の手法に頼るのではなく、複数の手法を組み合わせることで、エンド開拓の成功確率を高めることができるでしょう。

以下では、既存顧客からの紹介、ダイレクトメール、テレアポ、展示会やセミナーでのPRなど、SES企業が活用できる具体的な営業手法について詳しく見ていきます。

既存顧客からの紹介を活用

SES企業がエンド開拓を行う上で、最も有効な手法の一つが既存顧客からの紹介、つまりリファラル営業です。既存顧客との信頼関係を活かし、その顧客が持つ人脈や取引先ネットワークを通じて、新たな顧客を獲得するアプローチ方法です。

リファラル営業の最大のメリットは、信頼性の高い見込み客を獲得できる点です。既存顧客からの紹介は、SES企業の実績や信頼性を裏付けるものだからです。紹介を受けた企業は、SES企業に対する信頼度が高いため、営業活動がスムーズに進む傾向にあります。

リファラル営業を成功させるためには、既存顧客との関係性を大切にすることが重要です。日頃から顧客とのコミュニケーションを密にし、顧客満足度を高めておく必要があります。また、紹介依頼の際は、顧客メリットを明確に伝えることが求められます。

ダイレクトメール (DM)の送付

ダイレクトメール(DM)の送付は、エンド開拓の初期段階で有効な手法です。ターゲット企業に直接メールを送ることで、自社のサービスや実績をアピールできます。

DMの利点は、比較的低コストで多くの企業にアプローチできる点です。メールの作成や送付にかかる費用は限定的であり、営業リソースが限られている場合でも実施しやすい手法だと言えます。

ただし、DMの反応率は決して高くありません。メールの開封率を高めるためには、件名や本文の工夫が不可欠です。ターゲット企業の関心を引くようなメッセージを盛り込むことが重要です。また、DMは一方的なアプローチになりがちなので、フォローアップの仕組みを用意しておくことが求められます。

テレアポで直接アプローチ

テレアポ(テレフォンアポイントメント)は、電話を使って直接ターゲット企業にアプローチする営業手法です。DMなどで関心を示した企業に対して、電話で詳細な説明を行い、面談のアポイントを取るのが一般的な流れです。

テレアポの強みは、見込み客の反応を直接確認できる点です。電話での会話を通じて、ニーズの有無や関心度合いを探ることができます。また、その場で質問に答えることで、SES企業の専門性や提案力をアピールする機会にもなります。

ただし、テレアポを成功させるためには、高度なコミュニケーションスキルが求められます。限られた時間の中で、効果的にメッセージを伝えられる話術が必要です。また、ターゲット企業の業務スタイルに合わせた適切なタイミングで連絡することも重要です。

展示会やセミナーでのPR

展示会やセミナーは、SES企業が自社のサービスや実績をPRする絶好の機会です。ターゲット企業の担当者と直接会話ができるため、ニーズの把握や信頼関係の構築が進みやすくなります。

展示会では、自社ブースを設置して来場者に積極的に声をかけることが求められます。デモンストレーションやパンフレットの配布など、自社の強みを具体的に伝える工夫が必要です。また、名刺交換を通じて、後日のフォローアップにつなげることが重要です。

セミナーは、自社の技術力や専門性を訴求するのに効果的な手法です。ターゲット企業の関心が高いテーマを取り上げ、課題解決の方法を提案することで、SES企業としての信頼性を高めることができます。セミナー参加者とのコミュニケーションを通じて、具体的な案件につなげていくことが求められます。

以上のように、SES企業がエンド開拓を行う際には、様々な営業手法を活用することができます。

自社の営業リソースや強みを踏まえた上で、最適な手法を選択することが重要です。また、単一の手法に頼るのではなく、複数の手法を組み合わせることで、エンド開拓の成功確率を高めることができるでしょう。

エンド開拓で成功するためのポイント

SES企業がエンド開拓で成功するためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、差別化戦略の構築、信頼関係の構築、ニーズの把握という3つの観点から、エンド開拓を成功に導くためのコツを解説します。

差別化戦略の構築

エンド開拓で成功するには、自社の強みを活かした差別化戦略を構築することが重要です。エンド企業には、多くのSES企業からアプローチがあります。その中で選ばれるためには、独自の価値を提供する必要があるのです。

差別化の方法は様々ですが、例えば以下のような戦略が考えられます。

  • 特定の業界や技術領域に特化し、専門性を高める
  • 独自の開発手法やプロジェクト管理手法を確立する
  • 高品質なサービスを低コストで提供する体制を整える

自社の強みを分析し、他社にはない独自の価値を明確にすることが、差別化戦略の第一歩です。その上で、その価値をいかにアピールするかが重要になります。営業担当者は、自社の強みを深く理解し、具体的な事例を交えて説明できるようにしておく必要があります。

信頼関係の構築

エンド開拓では、エンド企業との信頼関係を構築することが何より重要です。信頼関係があってこそ、長期的な取引につながるからです。

信頼関係を築くためには、以下のようなポイントを押さえることが大切です。

  • エンド企業の課題やニーズに真摯に向き合う姿勢を示す
  • 約束を確実に守り、期待以上の成果を提供する
  • 定期的なコミュニケーションを通じて、良好な関係を維持する

営業担当者は、エンド企業の担当者とのラポール形成に努めることが求められます。単に営業トークを繰り返すのではなく、相手の話に耳を傾け、共感することが大切です。また、提案だけでなく、実行力と継続的なフォローを示すことが、信頼関係の構築につながります。

ニーズの把握

エンド開拓で成功するには、エンド企業のニーズを的確に把握することが欠かせません。ニーズを理解することで、最適なソリューションを提案できるからです。

ニーズの把握には、以下のようなアプローチが有効です。

  • エンド企業の事業内容や課題を深く理解する
  • 担当者との対話を通じて、潜在的なニーズを引き出す
  • 業界動向やIT動向を踏まえ、先を見据えた提案を行う

営業担当者は、エンド企業の業務に関する知識を深め、課題解決の方法を常に考えておく必要があります。その上で、担当者との対話を通じて、表面的なニーズだけでなく、潜在的なニーズを引き出すことが重要です。さらに、業界動向やIT動向を踏まえ、中長期的な視点でのソリューション提案ができれば、エンド企業からの信頼は厚くなるでしょう。

効率的なエンド開拓のための営業支援ツール活用法

SES企業がエンド開拓を成功させるためには、効果的な営業支援ツールの活用が欠かせません。CRMやリストマーケティングなどのツールを適切に選択・運用することで、営業活動の効率化と成果の最大化を図ることができるでしょう。ここでは、エンド開拓に役立つ代表的な営業支援ツールの活用法について解説します。

CRMツールの選び方と使い方

CRM(顧客関係管理)ツールは、顧客情報を一元管理し、営業活動を効率化するためのツールです。エンド開拓においては、見込み客の情報を適切に管理し、タイムリーなアプローチを行うことが重要となります。

CRMツールを選ぶ際は、自社の営業プロセスに合ったものを選ぶことが大切です。また、操作性や拡張性、コストなども考慮しましょう。導入後は、顧客情報の入力を徹底し、営業活動の進捗管理や分析に活用することが求められます。

リストマーケティングの実践

リストマーケティングは、見込み客リストを作成し、ターゲットを絞ったアプローチを行うマーケティング手法です。エンド開拓では、自社のサービスに合った企業をリストアップし、効果的な営業活動を展開することが重要です。

リストの作成には、企業データベースサービスの活用が有効です。また、自社の過去の取引先や問い合わせ履歴からリストを作ることもできます。作成したリストは、定期的にメンテナンスを行い、質の高いリストを維持することが大切です。

営業自動化ツールの活用

営業自動化ツールは、営業活動の一部を自動化することで、営業担当者の業務効率を高めるツールです。メールの自動送信やスケジュール管理、データ入力の自動化などが可能となります。

エンド開拓では、見込み客へのアプローチや商談のセッティングなどに営業自動化ツールを活用することで、営業担当者が重要な業務に集中できるようになります。ツール導入時は、自社の営業プロセスに合わせた設定を行うことが重要です。

商談管理ツールの導入

商談管理ツールは、商談の進捗状況を管理し、営業活動を可視化するためのツールです。エンド開拓では、多くの商談を同時に進行させる必要があるため、商談管理ツールの活用が欠かせません。

ツールを使うことで、商談のステータスや次のアクションが明確になり、適切なタイミングでのフォローが可能となります。また、営業担当者間での情報共有やノウハウの蓄積にも役立ちます。

分析ツールで成果を可視化

エンド開拓の成果を向上させるには、営業活動の分析とPDCAサイクルの実践が重要です。そのためには、営業データを可視化し、改善点を見つけ出す必要があります。

CRMや商談管理ツールに蓄積されたデータを分析ツールで可視化することで、営業活動の課題や強みが明らかになります。データに基づく意思決定を行うことで、エンド開拓の成果を最大化することができるでしょう。

以上のように、エンド開拓では様々な営業支援ツールを組み合わせて活用することが求められます。ツールの選定と運用には戦略的なアプローチが必要ですが、適切に活用することで営業活動の効率化と成果の向上が期待できます。

自社の営業スタイルに合ったツールを選び、現場の営業担当者の意見を取り入れながら、ツールを活用する体制を整備することが重要です。営業支援ツールを味方につけることで、エンド開拓の成功を手にすることができるでしょう。

まとめ

本記事では、SES企業がエンド開拓を行う理由や具体的な方法、成功のポイントについて詳しく解説しました。エンド開拓は、SES企業の収益性や競争力を高める上で欠かせない取り組みです。大手企業やベンチャー企業、製造業、金融機関などをターゲットに、差別化戦略の構築や信頼関係の構築、ニーズの把握に努めることが重要です。また、CRMやリストマーケティングなどの営業支援ツールを効果的に活用することで、エンド開拓の効率化と成果の最大化を図ることができるでしょう。