SES(システムエンジニアリングサービス)が頻繁に批判の的となっていることに疑問を感じていませんか?多重下請け構造、客先常駐、給与体系など、SESを取り巻く問題は複雑で多岐にわたります。

この記事では、SESが叩かれる本当の理由を徹底的に解説します。SESエンジニアとして働くことをSESの実態を理解し、自身のキャリアにどう活かすべきか、一緒に考えていきましょう。

SESが叩かれる理由とは?

SES(システムエンジニアリングサービス)は、IT業界において重要な役割を果たしていますが、同時に多くの批判にさらされています。その主な理由の一つが多重下請け構造にあります。

この構造がSES業界にどのような影響を与えているのか、詳しく見ていきましょう。

多重下請け構造の問題点

SES業界における多重下請け構造は、エンジニアの労働環境や待遇に大きな影響を与えています。この構造では、元請け企業から順に仕事が下請け企業に流れていき、最終的にエンジニアに仕事が割り当てられます。しかし、この過程で様々な問題が発生しています。

まず、多重下請け構造によって、エンドクライアントから支払われる金額の大部分が中間業者に吸い取られてしまうことがあります。これにより、実際に作業を行うエンジニアの手取りが大幅に減少してしまうのです。また、この構造によって、エンジニアとエンドクライアントの間に複数の企業が介在することになり、コミュニケーションの齟齬や情報の遅延が生じやすくなります。

さらに、多重下請け構造は、エンジニアのキャリア形成にも悪影響を及ぼす可能性があります。下請けの立場では、プロジェクトの全体像を把握しにくく、上流工程に携わる機会が限られてしまうことがあるのです。

客先常駐がSESを叩かれる要因に?

SESは、IT業界において重要な役割を果たしていますが、特に客先常駐という働き方に関して批判的な意見が多く聞かれます。この章では、客先常駐がSESを叩かれる要因となっている側面について詳しく見ていきましょう。

拘束時間の長さが問題

客先常駐における拘束時間の長さは、SESが批判される大きな要因の一つとなっています。多くの場合、SESエンジニアは客先企業の就業時間に合わせて働くことを求められます。

これにより、自社の勤務時間と客先の勤務時間に差異が生じることがあり、結果として長時間労働につながる可能性があります。

例えば、自社との契約では8時間労働であっても、客先では7.5時間労働が標準となっている場合、その差分の30分が残業として扱われるかどうかが問題となることがあります。

また、クライアント企業の要求に応えるため、やむを得ず残業が発生するケースも少なくありません。

さらに、客先常駐の場合、通勤時間が長くなることも多く、実質的な拘束時間がさらに延びてしまうことがあります。

これらの要因が重なり、ワークライフバランスの崩れやストレスの蓄積につながっているのです。

自由な働き方を阻む要因

SESの客先常駐という働き方は、エンジニアの自由な働き方を阻む要因となっていることも批判の対象となっています。多くのSESエンジニアは、自社よりも客先の規則や文化に従って働くことを求められます。

これにより、自身の希望する働き方や、スキルアップのための時間確保が難しくなることがあります。

例えば、リモートワークの導入が遅れている企業に常駐した場合、たとえ自社がリモートワークを推奨していても、それを実践することが困難になります。

また、客先の業務スケジュールに縛られることで、自己啓発や新しい技術の習得に充てる時間が制限されてしまうこともあります。

さらに、SESエンジニアは案件ごとに異なる環境で働くことになるため、長期的なキャリアプランを立てにくいという問題もあります。

これらの要因が、エンジニアの成長や自己実現の機会を制限し、SESに対する批判的な見方につながっているのです。

客先常駐がもたらすストレス

客先常駐という働き方は、エンジニアに特有のストレスをもたらすことがあります。これもSESが批判される大きな要因の一つとなっています。

まず、常駐先が変わるたびに新しい環境に適応しなければならないという心理的負担があります。新しい職場での人間関係の構築や、異なる企業文化への適応は、多くのエンジニアにとってストレスの源となっています。

また、客先常駐の場合、所属企業と常駐先の双方に対して配慮しなければならないという二重の負担があります。

さらに、客先常駐のエンジニアは、常駐先の正社員とは異なる立場にあるため、業務上の疑問点や問題を気軽に相談できない環境に置かれることがあります。

これにより、業務上のストレスが蓄積しやすくなります。

加えて、SESエンジニアは自社への帰属意識が薄れやすく、キャリアの方向性に不安を感じやすいという問題もあります。

これらの要因が重なり、客先常駐という働き方がエンジニアに大きなストレスをもたらし、結果としてSESに対する批判的な見方につながっているのです。

給与を中抜きするから叩かれている?

SES業界が批判を受ける大きな理由の一つに、給与の問題があります。特に「中抜き」と呼ばれる構造が、エンジニアの年収に大きな影響を与えていると言われています。

ここでは、SESの給与体系の問題点や市場相場との比較、そしてエンジニアの適正年収について詳しく見ていきましょう。

SESの給与体系の問題

SESの給与体系には、いくつかの問題点があります。最も大きな問題は、多重下請け構造による「中抜き」です。

この構造では、元請け企業から順に仕事が下請け企業に流れていき、その過程で各企業がマージンを取っていきます。結果として、実際に作業を行うエンジニアの手取りが大幅に減少してしまうのです。

例えば、クライアント企業が支払う単価が100万円だとしても、元請け、一次下請け、二次下請けと経由するうちに、最終的にエンジニアに支払われる金額は60万円程度になってしまうことがあります。この差額が「中抜き」と呼ばれ、SES業界の大きな問題点となっています。

また、SESの給与体系では、エンジニアの技術力や貢献度が適切に評価されにくいという問題もあります。多くの場合、給与は固定給であり、プロジェクトの成功や個人の成長が直接的に給与に反映されにくい構造になっています。

現在では還元率が80%以上の高還元SESというものが存在されており、単価に応じて給与が変動するというものも存在しています。しかし、手元に還元される金額が80%以上でない場合が多いため計算方法を調べる必要があります。

SESの給与と市場相場の比較

SESエンジニアの給与は、一般的に市場相場よりも低いと言われています。具体的な数字で見てみましょう。

ITエンジニア全体の平均年収は約558万円です。一方、SESエンジニアの平均年収は350~400万円程度と言われています。この差は決して小さくありません。

さらに、職種別に見ても差が顕著です。例えば、システムエンジニアの平均年収が550万円であるのに対し、SESエンジニアは400万円前後にとどまっています。

この差は、前述の「中抜き」構造や、SESの特性による影響が大きいと考えられます。

ただし、すべてのSES企業の給与が低いわけではありません。中には高い還元率を設定し、エンジニアに適切な報酬を支払っている企業も存在します。

そのため、SES企業を選ぶ際は、給与体系や還元率をしっかりと確認することが重要です。

エンジニアの適正年収

エンジニアの適正年収を一概に定義することは難しいですが、市場相場や個人のスキル、経験を考慮して判断する必要があります。

一般的に、ITエンジニアの平均年収は約558万円ですが、これはあくまで平均値です。実際の適正年収は、以下のような要因によって大きく変動します。

  • 経験年数
  • 技術スキル
  • プロジェクトマネジメント能力
  • 業界知識
  • コミュニケーション能力

これらの要因を考慮すると、例えば経験5年以上のエンジニアであれば、600万円以上の年収が適正と考えられる場合もあります。

SESが叩かれるのは一部の企業のせい?

SES業界が批判を受ける背景には、一部の企業の問題行動が大きく影響しています。しかし、すべてのSES企業が同じではありません。

ここでは、SES業界の評判を左右する要因と、良質な企業を見極めるポイントについて詳しく解説していきます。

一部企業の違法行為(業界の信頼)

SES業界の信頼を大きく損なう要因として、一部の企業による違法行為が挙げられます。これらの行為は、業界全体のイメージを悪化させる大きな要因となっています。

代表的な違法行為としては、偽装請負や二重派遣などがあります。

偽装請負とは、実質的には労働者派遣でありながら、業務委託契約の形式を取ることで労働者派遣法の規制を逃れようとする行為です。

また、二重派遣は、派遣先企業が別の企業に労働者を再派遣する行為で、これも法律で禁止されています。

これらの違法行為は、エンジニアの労働条件を悪化させるだけでなく、顧客企業にとってもリスクとなります。結果として、SES業界全体の信頼性を大きく損なうことになるのです。

悪質企業がSESの評判を下げる

SES業界の評判を下げる要因として、悪質な企業の存在が大きな影響を与えています。

これらの企業は、短期的な利益を追求するあまり、エンジニアや顧客企業に対して不適切な対応をすることがあります。

例えば、エンジニアのスキルや経験を誇張して顧客企業に紹介したり、適切な研修や支援を提供せずにプロジェクトに投入したりする企業があります。

また、エンジニアの労働条件を不当に低く設定したり、残業代を適切に支払わないなどの問題行為も見られます。

このような悪質な企業の行為は、エンジニアの不満を高め、SES業界全体の評判を下げる結果となっています。さらに、顧客企業の信頼も失うことになり、業界全体の成長を阻害する要因となっているのです。

SES企業の評判を左右する要因

SES企業の評判を左右する要因は多岐にわたります。主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • エンジニアの待遇
  • 教育・研修制度
  • プロジェクト管理
  • コンプライアンス
  • 顧客対応

これらの要因が適切に管理されている企業は、エンジニアからも顧客企業からも高い評価を得ることができ、結果としてSES業界全体の評判向上にも貢献することになります。

SES業界には確かに課題がありますが、それは一部の企業による問題であり、業界全体を否定するものではありません。良質な企業を見極め、自身のキャリアを大切にする姿勢を持つことで、SESエンジニアとして充実した職業人生を送ることができます。

SESでスキルが身につかないのは本当か?

SES業界では、エンジニアのスキルアップが難しいという指摘がよくあります。

しかし、この問題は複雑で、一概にSESでスキルが身につかないとは言えません。

ここでは、SESにおけるスキル習得の現状と課題、そして自己学習の重要性について詳しく見ていきましょう。

SESでのスキル習得の現状

SESでのスキル習得には、いくつかの特徴があります。

まず、SESエンジニアは様々な企業や案件に携わる機会があるため、多様な環境や技術に触れることができます。これは、幅広い経験を積む上で大きなメリットとなります。

一方で、SESの現場では特定の技術や業務に特化した作業を長期間行うことも多く、その場合は限られた範囲でのスキルアップにとどまる可能性があります。

例えば、テスターとしての業務が続くと、プログラミングスキルを向上させる機会が少なくなることがあります。

また、SES企業によっては、エンジニアの教育やスキルアップに積極的に取り組んでいるところもあります。これらの企業では、社内研修や資格取得支援、技術勉強会の開催などを通じて、エンジニアのスキルアップをサポートしています。

スキルが身につかない理由

SESでスキルが身につきにくい理由には、いくつかの要因があります。

まず、SESの業務形態そのものに起因する問題があります。SESエンジニアは客先に常駐することが多く、その結果、自社の技術や文化から離れてしまう傾向があります。

次に、プロジェクトの性質による制約があります。SESでは、クライアントの既存システムの保守や運用に携わることが多く、新しい技術を積極的に導入する機会が限られていることがあります。

さらに、時間的な制約も大きな要因です。SESの現場では、納期や予算の制約が厳しいことが多く、業務時間内でスキルアップに取り組む時間を確保することが難しい場合があります。

また、自己学習の時間が確保できないというケースも少なくありません。

自己学習の重要性

SESでのスキルアップの課題を克服するためには、自己学習が非常に重要になります。自己啓発に積極的に取り組むことで、SESの環境下でもスキルアップを実現することができます。

自己学習を効果的に行うためには、以下のような方法があります。

  • オンライン学習プラットフォームの活用
  • 技術書籍の読破
  • 個人プロジェクトの実施
  • 技術コミュニティへの参加
  • 資格取得への挑戦

SESエンジニアとしてスキルアップを実現するためには、与えられた環境の中で最大限の努力をすることが重要です。自己学習を通じて継続的にスキルを磨くことで、SESの環境下でも着実に成長を遂げることができるのです。

SESでのスキルアップには確かに課題がありますが、それは乗り越えられないものではありません。自己啓発の意識を持ち、積極的に学習に取り組むことで、SESエンジニアとしての価値を高め、キャリアの可能性を広げることができるのです。

まとめ

SESが批判される背景には、多重下請け構造による労働環境の悪化、客先常駐がもたらす働き方の制約、一部企業による違法行為、給与の中抜き問題、スキルアップの難しさなど、様々な要因があることがわかりました。

しかし、これらの問題はSES業界全体の課題であり、個々の企業や個人の努力によって改善の余地があります。エンジニアとしては、自己啓発に励み、適切な企業選びを行うことが重要です。SES業界も変革の時期を迎えており、今後はより良い労働環境と公正な待遇を提供する企業が増えていくことが期待されます。

SESの特性を理解し、そのメリットを活かしながら、自身のキャリアを主体的に構築していくことが、エンジニアとしての成長につながるでしょう。