SES企業への転職を考えているエンジニアの皆さん、単価が下がるのではないかと不安を感じていませんか?確かに、SES企業で働く際には単価低下のリスクがあります。しかし、その理由を理解し、適切な対策を取ることで、むしろキャリアアップにつなげることができるのです。
この記事では、SES企業での単価低下の原因、その対策方法、そして長期的なキャリア戦略について詳しく解説します。
SES企業で転職すると単価が下がる理由とは?
SES企業への転職を考えるとき、多くの人が気にかけるのが単価の問題です。確かに、SES企業に転職すると単価が下がるケースがあります。ここでは、その理由について詳しく見ていきましょう。
多重下請け構造による単価の減少
SES業界の特徴的な問題の一つが、多重下請け構造です。この仕組みが単価低下の大きな要因となっています。
元請け企業から順に、二次請け、三次請けと続く構造の中で、それぞれの段階で利益が取られていきます。そのため、実際に働くエンジニアに届く単価は、当初の金額から大きく減少してしまうのです。
例えば、元請け企業が100万円で受注した案件が、二次請けで80万円、三次請けで60万円というように、段階を経るごとに単価が下がっていきます。結果として、エンジニア本人の手取りは当初の半分以下になることも珍しくありません。
この構造は、業界全体の課題となっており、エンジニアの待遇改善を妨げる要因の一つとなっています。
スキルや経験不足による低評価
転職時に単価が下がるもう一つの理由として、スキルや経験の評価が挙げられます。
SES企業では、エンジニアのスキルと経験が直接的に単価に反映されます。そのため、前職での経験やスキルが新しい環境で十分に評価されないと、単価が下がってしまうのです。
特に、以下のような場合に低評価を受けやすくなります。
- 使用技術やプログラミング言語が異なる
- プロジェクトの規模や複雑さが前職と違う
- 業界特有の知識や経験が不足している
これらの要因により、転職先で即戦力として高く評価されないと、単価が下がってしまう可能性が高くなります。
案件の質や難易度の違い
SES企業で働く場合、さまざまな案件に携わることになります。しかし、すべての案件が同じ難易度や質を持っているわけではありません。
高度な技術力や専門知識を必要とする案件では、当然高い単価が設定されます。一方で、比較的簡単な作業や定型業務中心の案件では、単価が低くなりがちです。
転職時に、前職よりも難易度の低い案件にアサインされると、それに応じて単価も下がってしまうことがあります。これは、案件の内容と要求されるスキルレベルが、直接的に単価に影響するためです。
企業の利益率確保のための単価調整
SES企業も一つの営利企業です。そのため、企業の利益を確保するために、エンジニアの単価を調整することがあります。
新規参入のエンジニアに対しては、実力を見極めるまでの期間、意図的に低めの単価を設定することもあります。これは、企業側のリスク管理の一環であり、エンジニアの実力が証明されれば、徐々に単価を上げていく方針を取ることが多いです。
また、景気動向や市場の状況によっても、企業は単価を調整します。競争が激しい時期や、顧客企業からのコスト削減要請が強い時期には、新規参入者の単価が抑えられる傾向にあります。
これらの要因により、SES企業への転職時に単価が下がるケースが少なくありません。しかし、自身のスキルアップや交渉力の向上により、時間をかけて単価を上げていくことは十分に可能です。
SES企業での単価低下を避けるにはどうすればいい?
SES企業で働く際に気になるのが単価の問題です。しかし、適切な戦略を立てることで、単価低下を防ぎ、むしろ高めていくことも可能です。
ここでは、SES企業での単価維持や向上のための具体的な方法を見ていきましょう。
スキルアップと資格取得で市場価値を高める
エンジニアとしての市場価値を高めることは、単価維持の基本です。常に最新の技術トレンドを追い、新しいスキルを身につけることが重要です。
プログラミング言語やフレームワークの習得はもちろんのこと、クラウド技術やAI、IoTなどの先端分野にも積極的に取り組みましょう。これらのスキルは、高単価案件を獲得するための強力な武器となります。
また、資格取得も効果的です。情報処理技術者試験やベンダー認定資格など、業界で認知度の高い資格を取得することで、自身の専門性や技術力を客観的に示すことができます。
上流工程や高難度案件へのチャレンジ
単価を維持・向上させるためには、より付加価値の高い業務にチャレンジすることが重要です。具体的には、上流工程や高難度の案件に積極的に取り組むことが効果的です。
上流工程とは、要件定義や基本設計、アーキテクチャ設計などを指します。これらの工程は、プロジェクト全体の成否を左右する重要な役割を担うため、高い報酬が期待できます。
また、最新技術を駆使した開発や、大規模システムの構築・運用など、高度な技術力や経験が求められる案件にチャレンジすることも、単価向上につながります。
このようなチャレンジには、以下のようなメリットがあります。
- 高度なスキルや経験を積むことができる
- プロジェクトにおける重要度が増し、評価が上がる
- 結果として、より高い単価での案件獲得につながる
ただし、新しい分野にチャレンジする際は、十分な準備と学習が必要です。自己研鑽を怠らず、常に成長し続ける姿勢が大切です。
自身の市場価値を把握し適切な交渉を行う
単価維持のためには、自身の市場価値を正確に把握し、適切な交渉を行うスキルも重要です。
まず、同じスキルセットを持つエンジニアの相場を調査しましょう。転職サイトや業界誌、知人のネットワークなどを活用し、情報収集を行います。
自身のスキルや経験、資格などを客観的に評価し、市場での適正な評価額を把握します。この際、以下のような点を考慮するとよいでしょう。
- 保有するスキルの希少性
- プロジェクトでの実績
- 業界経験年数
- 取得している資格
これらの情報を基に、SES企業や顧客企業との交渉に臨みます。ただし、高圧的な態度は避け、win-winの関係を築けるよう心がけましょう。
還元率の高いSES企業を選ぶ
単価維持のためには、働く企業選びも重要です。還元率の高いSES企業を選ぶことで、より高い報酬を得ることができます。
還元率とは、顧客企業から受け取る金額のうち、どれだけがエンジニアに支払われるかを示す割合です。一般的に、60〜70%程度が平均的ですが、80%以上の高還元率を実現している企業もあります。
ただし、還元率だけでなく、福利厚生や教育制度、キャリアパスなども総合的に評価することが大切です。長期的なキャリア形成を考えると、単に還元率が高いだけでなく、自身の成長を支援してくれる環境も重要な選択基準となります。
これらの方策を組み合わせることで、SES企業での単価低下を防ぎ、むしろ向上させることも可能です。自身の価値を高め続け、適切な環境を選択することで、エンジニアとしての成長と安定した収入を両立させましょう。
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SES企業の転職でキャリアアップを目指すために注意すべき事とは?
SES企業への転職は、多様な案件経験を積める反面、キャリアの方向性を見失いやすいという側面もあります。
ここでは、SES企業でのキャリアアップを成功させるための重要なポイントを解説します。
企業の案件や取引先の質を確認する
SES企業を選ぶ際、最も重要なポイントの一つが案件の質です。高品質な案件に携わることで、貴重な経験を積み、スキルアップにつなげることができます。
まず、企業が扱う案件の内容や規模を確認しましょう。大規模プロジェクトや先端技術を使用する案件は、キャリアアップの観点から非常に魅力的です。また、上流工程に携わる機会があるかどうかも重要なポイントです。
次に、取引先企業の質にも注目します。有名企業や業界をリードする企業との取引が多い場合、質の高い案件に携わる可能性が高くなります。また、そうした企業での経験は、将来のキャリアにとっても大きな強みとなります。
具体的には、以下のような点を確認するとよいでしょう。
- 案件の技術スタック(使用言語、フレームワークなど)
- プロジェクトの規模や期間
- 上流工程(要件定義、設計など)への参画機会
- 主要取引先企業のリスト
- 過去の実績案件の内容
これらの情報を総合的に判断し、自身のキャリア目標に合致した企業を選びましょう。
キャリアパスや教育制度を重視する
SES企業でのキャリアアップを成功させるには、企業のキャリアパスや教育制度にも注目する必要があります。
まず、明確なキャリアパスが用意されているかを確認しましょう。たとえば、プログラマーからシステムエンジニア、プロジェクトマネージャーへと段階的にステップアップできる仕組みがあるか、各段階で必要なスキルや経験が明示されているかなどがポイントです。
また、教育制度の充実度も重要です。技術の進化が速いIT業界では、継続的な学習が不可欠です。以下のような教育支援があるかチェックしましょう。
- 社内研修プログラムの有無と内容
- 資格取得支援制度(受験料補助、合格奨励金など)
- 外部セミナーや勉強会への参加サポート
- オンライン学習ツールの提供
これらの制度が充実している企業であれば、自身のスキルアップをサポートしてくれる環境が整っていると言えます。
長期的なキャリアプランを考慮した企業選び
SES企業への転職を考える際は、長期的なキャリアプランを念頭に置いた企業選びが重要です。
まず、自身のキャリア目標を明確にしましょう。たとえば、特定の技術分野のスペシャリストを目指すのか、プロジェクトマネジメントのキャリアを歩むのか、将来的に起業を考えているのかなど、5年後、10年後の自分の姿をイメージします。
そのうえで、選択する企業がそのキャリア目標の実現をサポートしてくれるかを判断します。以下のような点を考慮するとよいでしょう。
- 希望する技術分野の案件が豊富にあるか
- マネジメント経験を積める機会があるか
- 社内ベンチャー制度や独立支援制度があるか
- グローバル案件や海外勤務の機会があるか
また、企業の成長性や安定性も重要な要素です。業界内での評判や財務状況、将来の展望なども調査し、長期的に安心してキャリアを積める環境かどうかを判断しましょう。
フリーランスや自社開発企業への転向も視野に入れる
SES企業でのキャリアを考える際、将来的なフリーランスへの転向や自社開発企業への転職も選択肢の一つとして視野に入れておくとよいでしょう。
フリーランスには、高い報酬や自由な働き方というメリットがありますが、安定した案件の確保やスキルの継続的な向上が課題となります。SES企業での経験は、これらの課題に対する準備として非常に有効です。
一方、自社開発企業への転職は、一つのプロダクトに深く関わり、長期的な視点での開発経験を積めるというメリットがあります。SESで培った幅広い経験と柔軟性は、自社開発企業でも大いに活かすことができます。
これらの選択肢を見据えて、以下のような準備をしておくとよいでしょう。
- 特定の技術分野での専門性を高める
- プロジェクトマネジメントスキルを磨く
- 人脈形成に努める
- 自己管理能力や時間管理能力を向上させる
SES企業での経験を踏み台として、さまざまなキャリアパスを描くことができます。常に市場のトレンドや自身のキャリア目標を意識しながら、柔軟にキャリア戦略を立てていくことが大切です。
以上のポイントを押さえつつSES企業への転職を検討することで、より確実にキャリアアップを実現できるでしょう。自身の目標に合った企業を慎重に選び、積極的にスキルアップに取り組むことで、IT業界でのさらなる飛躍につながります。
まとめ
SES企業への転職は、単価低下のリスクがある一方で、多様な経験を積みキャリアアップのチャンスも豊富です。単価低下の主な原因である多重下請け構造やスキル評価の問題を理解し、それに対応するためのスキルアップや交渉力の向上が重要です。
また、企業選びの際は案件の質や教育制度、長期的なキャリアパスを重視しましょう。さらに、将来的なフリーランスや自社開発企業への転向も視野に入れ、常に市場価値を高める努力を続けることが大切です。
これらの点に注意を払いながら戦略的にキャリアを構築することで、SES企業での転職を成功に導き、エンジニアとしての飛躍につなげることができるでしょう。