データセンターやSES企業で働くエンジニアの皆さん、キャリアの将来性に不安を感じていませんか?「底辺」と呼ばれる現状から抜け出せるのか、スキルアップや転職の可能性はあるのか、悩みは尽きないことでしょう。
この記事では、データセンター・SESエンジニアの実態から、キャリアアップの具体的な方法、業界の将来展望まで、幅広く解説します。
データセンター・SESエンジニアの現状とは?
データセンターやSES企業で働くエンジニアの現状について、待遇や業務内容を詳しく見ていきましょう。
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一般的な待遇と年収の実態
データセンターやSES企業で働くエンジニアの待遇は、一般的なIT企業と比べてやや低めです。年収の幅は経験や役職によって大きく異なりますが、おおよそ300万円から500万円程度が平均的です。
新卒入社の場合、初任給は月給20万円前後からスタートすることが多く、年収にすると300万円程度になります。経験を積んでも、昇給の幅は小さいのが特徴です。
一方で、残業代や休日出勤手当などの諸手当は比較的充実している場合があります。ただし、これらの手当を含めても、同年代の他業種と比較すると低めの水準にとどまることが多いです。
福利厚生面では、社会保険完備が一般的ですが、その他の特別な福利厚生制度は少ない傾向にあります。有給休暇の取得率も、業務の性質上、低めになりがちです。
主な業務内容と求められるスキル
データセンターエンジニアの主な業務は、サーバーやネットワーク機器の管理・運用です。具体的には以下のような仕事が含まれます。
- サーバーの監視と障害対応
- ネットワーク機器の設定変更
- セキュリティ対策の実施
- バックアップとリストア作業
- クライアントからの問い合わせ対応
一方、SESエンジニアの業務内容は、派遣先の企業によって大きく異なります。システム開発や保守、インフラ構築など、幅広い業務に従事することがあります。
求められるスキルとしては、基本的なネットワークやサーバーの知識が必須です。また、Linux系OSの操作スキルやシェルスクリプトの基本的な理解も重要です。
さらに、クラウドサービス(AWS、Azure、GCPなど)の知識やセキュリティ関連の知識も、近年では重要性が増しています。
勤務形態と労働環境の特徴
データセンターやSES企業での勤務形態は、通常のオフィスワークとは大きく異なります。
データセンターでは、24時間365日の運用が求められるため、シフト制勤務が一般的です。早朝や深夜、休日出勤も珍しくありません。具体的なシフトの例としては、
- 日勤:9:00〜18:00
- 夜勤:18:00〜翌9:00
- 休日勤務:土日祝日の24時間シフト
このようなシフトを1〜2週間単位で回すことが多いです。
労働環境面では、高度な空調管理がされた環境で作業を行うため、身体的な負担は比較的少ないです。ただし、長時間のデスクワークや画面注視による目の疲れなどには注意が必要です。
SESエンジニアの場合、派遣先の企業によって勤務形態が決まります。通常の9時〜18時の勤務が多いですが、プロジェクトの状況によっては残業が発生することもあります。
なぜ「底辺」と呼ばれるのか?その理由を解説
データセンターやSES企業のエンジニアが「底辺」と呼ばれる背景には、複数の要因があります。この呼称は決して適切ではありませんが、業界内外での認識を反映しています。
ここでは、その理由を詳しく解説します。
業界内での評価と社会的認知度の低さにより
IT業界内でのデータセンターやSES企業の位置づけは、必ずしも高くありません。これらの職種は、創造的な仕事よりも定型業務が多いとみなされがちです。
社会的認知度も低く、一般の人々にはその仕事内容がわかりにくいという問題があります。「コンピューターの管理をしている」程度の認識しかされないことも多く、専門性や重要性が正しく理解されていません。
このイメージ問題は、求人市場でも影響を及ぼしています。転職時に不利になることがあり、キャリアアップの障壁となることもあります。
また、メディアでもこれらの職種が取り上げられる機会は少なく、社会的な注目度の低さが評価の低さにつながっている面もあります。
技術的スキルの陳腐化リスクがある
データセンターやSES企業では、最新の技術に触れる機会が限られていることがあります。特に、長期間同じ環境で作業を続けると、技術の進歩から取り残される恐れがあります。
また、業務の性質上、特定のレガシーシステムの運用に特化してしまい、汎用性のある技術力が身につきにくいという問題もあります。
このスキルの陳腐化は、将来のキャリア形成に大きな影響を与える可能性があります。技術革新の速いIT業界では、常に新しい知識とスキルが求められるため、この点が「底辺」と呼ばれる一因となっています。
多重下請け構造による待遇の悪化により
SES業界特有の問題として、多重下請け構造があります。元請け企業から順に、二次請け、三次請けと階層が深くなるにつれ、エンジニアの手取りは減少していきます。
具体的には、元請け企業が顧客から受け取る金額の半分以下しか、実際に働くエンジニアの手元に届かないケースも少なくありません。例えば、
- 顧客企業が支払う金額:100万円/月
- 元請け企業の取り分:30万円
- 二次請けの取り分:20万円
- 三次請け(実際に働くエンジニア)の収入:50万円
このような構造により、エンジニアの待遇が著しく悪化することがあります。また、この構造下では昇給や待遇改善の交渉も困難になりがちです。
さらに、契約更新の不安定さや、突然の契約打ち切りのリスクなども、この業界の問題点として挙げられます。
単調作業によるモチベーションが低下するため
データセンターやSES企業での業務は、しばしば単調で反復的な作業が中心となります。例えば:
- 定期的なサーバーの監視
- 決められた手順でのトラブル対応
- 同じような内容の問い合わせ対応
これらの業務は重要ですが、個人の創造性や技術力を発揮する機会が限られています。そのため、仕事へのやりがいを感じにくく、モチベーションの維持が難しいのが現状です。
また、業務の性質上、自分の成果が目に見えにくいことも多く、達成感を得られにくいという問題もあります。
長期的にこのような環境で働くことで、技術者としての成長意欲が失われたり、IT業界全体への失望感を抱いたりする人も少なくありません。
キャリアアップの道筋はある?具体的な方法を紹介!
データセンターやSES企業で働くエンジニアにとって、キャリアアップの道は決して閉ざされていません。むしろ、今の立場を活かしながら成長できる機会は多くあります。
ここでは、具体的なキャリアアップの方法を紹介します。
自己学習と技術トレンドのキャッチアップする
キャリアアップへの第一歩は、自己学習から始まります。技術の進歩が速いIT業界では、常に新しい知識を吸収し続けることが重要です。
効果的な学習方法としては、オンライン学習プラットフォームの活用が挙げられます。Udemyやコードキャンプなどのサービスでは、最新の技術トレンドに関する講座が豊富に用意されています。これらを活用し、クラウドコンピューティング、AI、機械学習などの分野の知識を深めることができます。
また、技術書の精読も欠かせません。定期的に新刊をチェックし、業界の動向を把握することが大切です。
さらに、ハンズオン形式の学習も重要です。自宅にラボ環境を構築し、学んだ技術を実際に試してみることで、理解が深まります。例えば、Raspberry Piを使ってホームサーバーを構築し、クラウド技術との連携を試すなどの実験が可能です。
社内での積極的なプロジェクト参加する
自己学習で得た知識を実践に移す場として、社内プロジェクトへの参加は非常に有効です。
まず、上司や先輩に自分のスキルアップの意欲を伝え、新しいプロジェクトや任務にアサインしてもらうよう働きかけましょう。例えば、新しいサーバー構築のプロジェクトや、セキュリティ強化の取り組みなどに参加を希望することができます。
また、社内の勉強会や技術発表会があれば、積極的に参加しましょう。可能であれば、自ら主催することも検討してみてください。これにより、自分の知識を深めるだけでなく、社内でのプレゼンスも高めることができます。
さらに、クロスファンクショナルな業務にも挑戦してみましょう。
副業やフリーランス活動を行う
近年、副業やフリーランス活動を通じてスキルを磨く方法も注目されています。これらの活動は、メイン業務では得られない経験を積む絶好の機会となります。
まず、副業を始める前に、会社の規定を確認することが重要です。多くの企業で副業が認められるようになってきていますが、利益相反にならないよう注意が必要です。
副業の形態としては、オンラインでの技術記事の執筆やプログラミング教育、小規模なウェブサイト制作などが考えられます。これらの活動を通じて、最新技術に触れる機会を増やし、実践的なスキルを磨くことができます。
フリーランス活動では、クラウドソーシングプラットフォームを活用するのが効果的です。ランサーズやクラウドワークスなどのサービスで、小規模な案件から始めてみましょう。これにより、多様な案件に触れ、幅広い経験を積むことができます。
また、オープンソースプロジェクトへの貢献も有効な方法です。GitHubなどのプラットフォームで、興味のあるプロジェクトに参加し、コードを提供することで、実践的なスキルを磨くと同時に、コミュニティ内での評価も得られます。
これらの活動は、単にスキルアップだけでなく、将来的な独立や転職の際にも役立つポートフォリオとなります。ただし、メイン業務とのバランスを取ることを忘れずに、計画的に取り組むことが大切です。
業界の将来性と今後の展望とは?
データセンターやSES業界は、テクノロジーの急速な進化により大きな変革期を迎えています。AIや自動化技術の台頭は、これらの業界に多大な影響を与えつつあります。
ここでは、業界の市場動向から技術革新がもたらす影響、そして今後求められるスキルの変化まで、幅広い視点から将来の展望を探ります。
データセンターの市場動向
データセンター業界の市場動向は、デジタル化の加速に伴い着実な成長を続けています。クラウドコンピューティングの普及や、ビッグデータ分析の需要増加により、データセンターの重要性は一層高まっています。
市場規模を見ると、世界のデータセンター市場は2020年に約2,500億ドルだったものが、2026年には約4,350億ドルに達すると予測されています。この成長率は年平均9.9%に相当し、極めて堅調な伸びと言えるでしょう。
日本国内に目を向けると、2020年の市場規模は約1兆5,000億円で、2025年には約2兆円に拡大すると見込まれています。特に、エッジコンピューティングの需要増加や5Gの普及により、地方でのデータセンター建設も活発化しています。
また、セキュリティの重要性も増しています。サイバー攻撃の高度化に伴い、データセンターのセキュリティ対策は一層強化されています。AIを活用した異常検知システムの導入や、ゼロトラストセキュリティの採用など、新たな取り組みが進んでいます。
AI・自動化がもたらす影響と対策
AIと自動化技術の進歩は、データセンターとSES業界に大きな変革をもたらしています。これらの技術は業務効率を飛躍的に向上させる一方で、従来の人手による作業の多くを代替する可能性があります。
データセンターにおいては、AIを活用した自動運用管理(AIOps)の導入が進んでいます。例えば、サーバーの負荷予測や障害の事前検知、自動復旧などが可能になっています。具体的には、IBMのWatsonやGoogleのCloudAIなどのプラットフォームを活用し、運用の大部分を自動化する取り組みが増えています。
これにより、24時間365日の監視業務や、ルーチンワークの多くが自動化されつつあります。例えば、あるデータセンターでは、AIによる運用自動化により、人手による対応が必要なインシデントが50%削減されたというケースもあります。
SES業界でも、コード生成AIやローコード・ノーコードプラットフォームの台頭により、プログラミング業務の一部が自動化されつつあります。GitHubのCopilotやOpenAIのChatGPTなどのツールは、コーディングの効率を大幅に向上させています。
現役エンジニアの体験談から学ぶ!
データセンターやSES業界で働くエンジニアたちの中には、さまざまな経験を積み、キャリアを大きく変えた方々がいます。
ここでは、成功例や失敗例を含む現役エンジニアの実際の体験談を紹介します。
データセンターからクラウドエンジニアへの転身
佐藤健太さん(仮名)は、データセンターで5年間勤務した後、クラウドエンジニアとして大手IT企業に転職しました。彼の成功の鍵は、日々の業務をこなしながら、自己学習に励んだことでした。
佐藤さんは、データセンターでの日常業務の合間を縫って、オンライン学習プラットフォームを活用し、AWS認定ソリューションアーキテクトの資格を取得しました。さらに、個人的なプロジェクトとしてクラウド上でウェブアプリケーションを開発し、実践的なスキルを磨きました。
転職活動では、これらの経験と資格が評価され、複数の企業から内定を獲得。最終的に、年収が1.5倍になる条件で、憧れの企業に転職することができました。
佐藤さんは、「データセンターでの経験が、クラウド環境の理解に大いに役立ちました。物理的なインフラストラクチャの知識があるからこそ、クラウドの利点と課題を深く理解できています」と語っています。
SESから自社開発企業への転職体験
田中美咲さん(仮名)は、SES企業で3年間システム開発に携わった後、自社でプロダクト開発を行うIT企業に転職しました。彼女の転職は、当初は苦労の連続でしたが、最終的には大きな成功につながりました。
SES時代、田中さんは複数の客先で異なるプロジェクトに参加し、幅広い経験を積みました。しかし、短期的な成果を求められる環境に疑問を感じ、じっくりとプロダクトを育てる仕事に憧れるようになりました。
転職後、自社開発の環境に戸惑いを感じる場面もありました。「SESでは与えられた仕様に従って開発することが多かったですが、自社開発ではユーザーのニーズを理解し、プロダクトの方向性を考える必要がありました」と田中さんは振り返ります。
しかし、SEクラウドファンディング時代に培った柔軟性と適応力を活かし、徐々に新しい環境に順応。2年後には、主力プロダクトの開発リーダーに抜擢されました。
「SESでの経験が無駄だったわけではありません。むしろ、多様な環境での経験が、現在のプロダクト開発に活きています」と田中さんは語っています。
フリーランスとして独立した元SESエンジニアの新たな選択肢
鈴木一郎さん(仮名)は、7年間SES企業で働いた後、フリーランスエンジニアとして独立しました。この決断は、彼のキャリアに大きな転機をもたらしました。
SES時代、鈴木さんは様々なプロジェクトで経験を積みました。しかし、長時間労働や頻繁な客先常駐に疲れを感じていました。「もっと自由に働きたい、自分のペースで成長したいと思うようになりました」と鈴木さんは当時を振り返ります。
独立後、最初の半年は不安定な収入に苦労しましたが、徐々に安定してきました。現在では、SES時代の1.5倍の収入を得ながら、週4日勤務を実現しています。
「フリーランスには不安定さもありますが、自己管理能力と技術力さえあれば、大きな可能性があります。SESの経験があるからこそ、クライアントの多様なニーズに応えられると感じています」と鈴木さんは語ります。
まとめ
データセンター・SESエンジニアの現状は決して楽観視できるものではありませんが、キャリアアップの道は確実に存在します。低賃金や単調な業務など、「底辺」と呼ばれる理由を理解し、それを克服するための具体的な方策を学びました。
自己学習やプロジェクト参加、副業など、様々なアプローチでスキルアップが可能です。業界の将来性を見据え、AI・自動化時代に求められるスキルを磨くことも重要です。
現状に満足できないあなたも、努力次第で必ず道は開けます。この記事を参考に、自分なりのキャリアプランを立て、一歩ずつ前進していってください。